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精少納言 Sei Shônagon 枕草子 Makura no Sôshi Matsuo Satoshi and Nagai Kazuko, eds. Tokyo: Shôgakkan, 1994. Vol. 18. Sei Shônagon (text circulating since ca. 996) 48 一 春はあけぼの 春はあけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎ は、すこしあかりて、紫だちたる雲のほそくたなび きたる。 夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、 蛍もなほく飛びちがひたる。また、ただ一つ二つな ど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降る もをかし。 秋は夕暮。夕日のさして山の端いと近うな りたるに、烏のねどころへ行くとて、三つ四つ、二 つ三つなど飛びいそぐさえあはれなり。まいて雁な どのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとおか し。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふ べきにあらず。 冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきに もあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒き に、火などいそぎおこして、炭持てわたるも、いと つきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけ ば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。 [3.136.97.64] Project MUSE (2024-04-26 16:10 GMT) Classical Japanese 49 Modernized Japanese crib provided beneath original: 春はあけぼの。だんだん白んでくっきりとし てゆく山ぎわが、少し赤みを帯び明るくなって、紫 がかった雲が細く横になびいているの。 夏は何といっても夜だ。月のあるころは言 うまでもない、闇もやはり、蛍がたくさん入り乱れ て飛びかっているの。また、たくさんではなく、た だ一つ二つなど、かすかに光って飛んで行くのも、 夏の夜の快い趣がある。雨などの降るのもおもしろ い。 秋は夕暮。夕日がさして、もう山の端すれ すれになっている時に、烏がねぐらへ行くというの で、三つ四つ、二つ三つなど、飛んで急いで帰るの までしみじみとした感じがする。まして雁などの列 を作っているのが、ひどく小さく見えるのは、とて もおもしろい。日がすっかり沈んでしまって、風の 音や虫の音などが聞えるのもやはり、言いあらわし ようもなくよいものである。 冬は早朝。雪が降っているのは、言うまでも ない、霜がたいへん白くおいたのも、またそうでな くてもとても寒い時に、火などを急いでおこして、 炭火を持って行き来するのも、極めて冬の早朝に似 つかわしい。昼になって、だんだん寒気がうすらい でゆるむ一方になってゆくと、火鉢の火も、白い灰 が多くなってしまって、好もしくない。 (pp. 25–26) ...

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